盆は、新暦でも七月におこなうところがあるが、月遅れの八月十三日から十六日までにおこなわれている場合が多い。その準備は八月に入るとすぐに始められる。
八月一日はイシノトといい、地獄の釜(かま)のふたが開いて仏様が盆にそれぞれの家に帰るために出発する日であるといわれている。栗田や桜枝町では七月三十一日をウラボン(盂蘭盆)といい、夕方になると善光寺へ仏迎えにいく。かつて芋井などの西山の人びとは家で作ったヤキモチをもって仏迎えにきて、善光寺でお籠(こ)もりをして一夜を明かす人たちがたくさんいた。そのために、本堂のなかもまわりもお籠もりの人たちでいっぱいであった。ろうそくなどの火をつけることが許されていなかったので、みんなは真っ暗ななかでお籠もりをしていた。それを目当てに町のこどもは、ヤキモチを食べれば病気にならないといってはお籠もりをしている人たちのヤキモチを盗みにいったという。のちには本堂に入れなくなったので、山門の下にむしろを敷いてお籠もりをした。最近まで大勧進(だいかんじん)の一室を使ってお籠もりをしていた人もあった。
盆の墓掃除は、八月一日か七日にやるというところが多い。迎え盆の十三日にするというところもわずかではあるがみられる。
十日前後にはオミガキといって仏具をきれいに掃除したり、盆花を採りにいったりして仏様を迎える準備をする。盆花は十二日の夕方中央通りに花市が立つのでそこで買ったり、庭先にある花を採ったりして飾る。三水(信更町)では、ききょうやアワバナを山へ採りにいくという。