それぞれの集落では、精神的なよりどころとして、神社をまつっている。この神社を支えているのはウジコ(氏子)であり、その代表者である氏子総代が中心となって祭りをおこなっている。
祭りは、神前に供物(くもつ)を供え、神を迎えて祈りと感謝をささげるもので、共同性を帯びたものである。生産生業にかかわっては、豊穣(ほうじょう)を祈り、また人びとの安全を祈っての共同祈願がおこなわれる。村中で聖(ひじり)権現に行って祈禱(きとう)してもらい、お札をもらってきて神棚に供えて雨が降るのを待つたという雨乞(あまご)い神事や、にんにく・すべりひゅなどを門口につるして魔よけにしたという悪病よけなど、民間にはさまざまな信仰がおこなわれてきた。また、個人祈願としては多様な神仏を屋内や屋外にまつり、病気平癒のための祈りをしたり、新しい生命の誕生にかかわっての安産祈願をおこなったりすることなどが日常生活のなかで営まれてきた。
こうした信仰に深く根ざし、その土地に生活する人びとによって培(つちか)われ支えられてきた民俗芸能は、年中行事や祭りの日などハレの日におこなわれることが多い。それは地域の人びとの心のよりどころとなり、連帯意識を高揚させ、生活意欲を高めるために大きな役割を果たしてきている。このように民俗芸能は、神々にたいする住民の祈りの一つの表現方法であり、感謝のしるしをあらわしたものであり、喜びの表現でもある。しかし、都市化近代化によって生活が多様化し、そうした民俗芸能も変容してきている現状である。