氏子

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人びとが日常生活を営む村にはいろいろな神様がまつられている。そのうちで村の中心と考えられている神を氏神とか産土(うぶすな)神とか鎮守様とかとよんだ。こうした神社の信仰を支えているのは氏子であり、氏子総代などの代表者のもとに組織を作り、祭りにたずさわる。氏子の範囲はムラウチ(村内)の人たちだけではなく、いくつもの村や町に広がっていることもある。たとえば、桜枝町では、天神社は桜枝町だけが氏子であるが、湯福神社の氏子は一六ヵ町にまたがり、そのうち桜枝町・箱清水・西之門町・横町の四町をカマバンという。西之門町の弥栄(やさか)神社は現在三三町が氏子である。このうち西之門町と桜枝町を「西桜」といい、元祖だといっている。

 また、松代では白鳥神社は士族の神とされ、殿(との)町・清須(きよす)町・代官町など八つの町が氏子であるのにたいして、祝(ほうり)神社は町人の神とされて、馬喰(ばくろう)町・紙屋町・紺屋町など九つの町が氏子である。

 氏子になれるのは、その村に住んでいるものというのがほとんどである。太田(吉田)では、村に永住するものを氏子と考える。しかし、須釜(すがま)(若穂保科)・岡(篠ノ井西寺尾)・境(稲里町)・花立(はなたて)(更北小島田町)のように転入者が希望すれば氏子とするところや、赤沼(長沼)・北屋島(朝陽)・三水(さみず)(信更町)のように祭典費を納めると氏子となれるところもある。小市(安茂里)や綱島(青木島町)では氏子になるときお酒を持参して仲間入りしたという。

 村の祭りをおこなうときに、その祭りの中心となったり、神職を助けて準備などをする家を、日方(ひなた)(小田切塩生(しょうぶ))ではヤド、桜枝町や十二(じゅうに)(篠ノ井有旅(うたび))では会所とよんだ。中心となる人のことを当番、世話人、祭典係、氏子総代などという。任期は一年から四年までとまちまちである。花立では宮世話人は氏子から年齢順に選ばれ、任期は二年であった。今井(川中島町)では祭典係は選挙で決め、係になれる人は三五歳以上の人で四〇歳になるとやめたという。また中沢(篠ノ井東福寺)では氏子総代は三人いて任期は三年だったが、交替で当番にあたった。昔は有力者が一人で三回、四回とつづけてやったが、今は交替するようになった。