神は屋内の各所にもまつられている。屋内のその場所その場所の役割に応じて、それにふさわしい神がまつられる。ふだん生活する居間には神棚があって、ここには村の神社のお札をはじめとして、県内はもちろん、県外の神社のお札までまつられ、その種類は非常に多く、村や各家によって特徴がみられる。さらに勝手にはえびす棚があって、えびす・大黒をまつり、火を使うところには荒神(こうじん)をまつる。竈(かまど)があるところにはカマガミサマをまつるし、便所には便所神をまつる。水を使うところには水神(すいじん)様をまつる。座敷の床の間には掛け軸をかけ、また仏壇がおかれているところも多い。戸口にはお札をはり、土蔵にも盗難よけのお札をはる。こうして家中の主要な役割を果たしている場所場所には、それぞれの願いをこめて神をまつっているのである。
居間などのかもいの上に特別な棚を作り、そこに神のお札をまつる。これを神棚といい、家の主だった神々がまつられる。村の神社でまつる産土神を中心にして、戸隠神社などのお札をまつる家が多い。えびす・大黒をまつる家も多く、それはお札ではなく神像をまつることが多い。
このほか、講で受けたお札や旅行などに行って受けてきたお札などもまつられる。したがって、まつる神の数は多いし、家ごとの違いもみられる。中沢のある家では、神棚の上に置いてある木製の祠(ほこら)には、神主が選んだ天照(あまてらす)皇太神・八幡神社・春日社・秋葉(あきば)神社・金毘羅宮の五柱の神をまつるとしている。しかし実際には、このほかに戸隠神社や御嶽(おんたけ)神社などのお札も、祠には入れないがまつっている。
神棚の神にお参りするのは、広瀬(芋井)のように毎月一日、十五日と祭日の決まっているところもあるが、毎日お参りするとか、年取り・正月にお参りするとか、村の祭りの日にお参りするといったところもある。南長池では、神様によってまつる日を決めており、一月十八日には山の神、二月二十五日には田の神、六月十日と十月十九日には三峯(みつみね)神社の神をまつるという。また、とくに祭日が決まっていないとするところも多い。
食べ物を煮炊きする場所である台所や勝手にも神がまつられている。これらの神は、火の神としての荒神様や秋葉様、水の神、食物の神としてカマガミサマや保食神(うけもちのかみ)、福の神としてえびす・大黒をまつることが多い。中沢では、勝手にえびすをまつるには小さい家ほどよいといわれて、小さな祠に入れてまつる。祭りの日は一定していないが、十一月二十日および一月二十日のえびす講にえびすをまつるところが多く、大黒もいっしょにまつる。また、花立では正月一日に、カマガミサマに注連(しめ)縄をし、オカザリを供えるし、桐原では正月にオカザリを上げてカマガミをまつる。これらは神々の祭りといっても、正月飾りをし、お供え物をする程度である。
土蔵には穀物や大切な金品を入れておくため、火防や盗難よけとして、入り口の戸に三峯神社のお札をはるところが多い。また、土蔵に入れておく貴重なものを守り増やすために、大黒やえびすも合わせてまつるところがある。土蔵の神のまつり方としては、赤沼では毎月八日に保食神と豊受姫神(とようけひめのかみ)をまつる。また、東横田(篠ノ井横田)では十二月三十一日から一月十一日まで鏡餅と松、注連飾りを土蔵の俵の上にお供えする。吉(よし)(若槻)でも正月に鏡餅を供える。