祭りが集中しているのは、コショウガツ(小正月)とよばれる一月十五日ころである。火祭りを道祖神の祭りとしているところも多く、木の人形を作ってこれをドウロクジンとよび、それをまつる地域がある。赤沼や日方では、一月十五日のドウロクジンにぬるでや松などを削って墨で顔を書いた男女の木の像を作って供えた。このように木で小さなドウロクジンとよぶ人形を作るところが、千曲川下流域に広がっている。これを夫婦神と考えていて、雪穴にまつられたり、その後ドンドヤキで焼かれたりする。長谷や越(篠ノ井塩崎)では、藁人形や色紙による雛(ひな)人形を道祖神に見立てて作り、その神像や道祖神碑を焼く祭りがおこなわれている。
また、この一月十五日の道祖神祭りにオンベ(御幣)をもって家々を回ってあるくところもある。これをカンジン(勧進)とよんでいる。こどもたちがおこない、米、餅(もち)、賽銭(さいせん)などを集める。広瀬では、小正月の一月十五日の朝、一五歳以下のこどもが厄よけ神をもって村中を回る。オンベは、各戸全員のこどもに配るため二十数本作る。こどもが背負う行李(こうり)の籠(かご)のなかに入れる、オンベで作った一対のドウソジンも作られた。八丈(はちじょう)の紙を使って作ったオンベをもったこどもたちは、「せいのかみのかんじんだ ぜにでもかねでもわくわくと ことしのさくはほうねんだ」と、繰り返し唱えながら各家を回り、お金や餅などをもらい歩く。新婚夫婦がいる場合は顔を出してもらい、夫婦の顔に筆で紅を塗り御祝儀をもらった。中川(松代町東条)では、長男の生まれた家にいって祝儀をもらった。このほか、小正月の火祭りとかかわってオヒマチ(お日待)をしたり、小豆を焼いて年占いをしたりするところもある。
道祖神をどのような神と考えているかは、場所場所によって違いがある。防塞(ぼうさい)の神、疫病よけの神と考えているところも多く、厄年の人の厄落としの行事をともなうところも多い。また、縁結びの神とするものがある。灰原(信更町)では道祖神が縁結びをするが、そのとき「いいのわりいの」といって男女を結び合わせる。そのうちにひょっとした拍子に「いいのいいの」といいそこねて結び合わせたときに、良い男と良い女が結ばれるのだという。道祖神は夫婦の神で夫婦仲がよいようにといってまつるのだが、この神は道の辻にいて「あの子とこの子」といって男女を結び合わせるとも考えられている。