農作物の実るころに吹く風は、一年間苦労した成果を吹き飛ばしてしまうことがある。そこで、その風の被害を食いとめるための風祭りがある。行事の名前はその祭りに重点をおいてカゼマツリ、あるいはカザマツリとよぶところが多いが、そのほかには広瀬や南長池や栗田(芹田)などトウセンボウとよぶ地域もある。
これらをおこなう日は、風の被害をもっとも受けやすい二百十日が多いが、とくに日が決まっておらず、強い風が吹くときにおこなうところもある。祭りの仕方としてもっとも多いのは、神社などに獅子舞を奉納したり神事をおこなったりするものである。村の神社で神官が執行し、村の代表者などが参列する。古森沢では二百十日の前夜、田楽灯籠(でんがくどうろう)を道端へ立てて神主を頼んで祭りをした。さらに神事や祈禱のあとには、御幣を立てたり鎌(かま)を立てたりするところもある。南長池では、氏神社で祭りをして御幣を切ったあと、それを風の方角に鎌を添えて立てて祈願した。岡田や長谷や東横田などでは、さおの先に鎌をつけて刃先を風の吹いてくる方向に向けて立てた。また、赤柴(あかしば)(松代町豊栄(とよさか))では注連(しめ)縄を組の入り口に張って風よけをした。