病気回復の祈願と礼参り

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人びとが病気になったとき、多くは氏神様に祈願した。とくに重病人が身内に出たときには、氏神様にお百度参りをし、治ったときにお礼参りをした。太田では、治ったときにはぼた餅を上げたという。今井ではお礼参りにお賽銭(さいせん)をたくさん上げた。上石川(篠ノ井塩崎)では、八幡様に祈願し、小石を神社から借りてきて病気のところをさすると治るといわれていて、治ると借りてきた小石を二倍にして神社に返しお礼参りをした。

 また人びとは、病気になった人や病名によって、祈願する神仏をさまざまに決めて対応した。こどもの病気や夜泣きに悩まされると、お地蔵さんに祈願した。赤沼では、村の延命地蔵さんに祈願し、食べ物、花、帽子や腹掛けなどを供えた。塚本では、夜泣きのこどもがいるとお地蔵さんにお参りをした。岡田では、こどもの病気のときお地蔵さんにお参りし、治ったときにはよだれ掛けや頭巾(ずきん)などを上げる習慣があった。中川(松代町東条)では松代の西念寺のお地蔵さんに祈願して、治ったときには小豆のおむすびを二個上げたという。

 目を患ったときには、三水では地元の長勝寺のおびんずる様へ祈願した。長谷では、せきが出たとき天白(てんぱく)さんに祈願し、全快すると豆を妙(い)ってお礼として供えた。桜枝町では、頭や肩、その他体が痛いのはロクサンにあたるといって大黒様・えびす様に灯明をあげて祈願し、ろうそくが一本とぼると治るとされた。


写真1-89 長勝寺びんずる様
(信更町三水 平成8年)

 戸部や広瀬では、マメネンブツといって、病人の枕元で念仏を唱えながら箸(はし)で升(ます)に入れた豆を一粒ずつ別の升に移していくと早く治るとされた。