一年中の田づくりの全作業やその一部を歌と身振りで物まね的に演じ、豊作を祈る芸能は、田植え祭り・御田(おんだ)・春田打ちなどとよばれている。
松代町東条の玉依比賣命(たまよりひめのみこと)神社に伝わる御田祭り(お田植え祭り)は、新しい年の初め(一月六日)に豊作を祈願し、拝殿を田とみなして稲作の作業過程を模擬的に演ずる。神職が唱える「春田をうなうなあ」を受けて、三人の作男が、三年生の桃の木を柄にし、そこへ餅をつけた餅鍬(くわ)を振り上げ、「延命小袋打ち出の小づち」と唱え、田打ちのしぐさを三度ずつ正面・東・南・西と四方に繰り返す。つぎに一人が馬になり、残りの二人がそれぞれ前のものの帯につかまり前かがみとなって田かきのまねをし、つぎは、三人がめいめい四つばいになって田直しをする。その後苗にみなした松葉の束を手にもって、神職の「おみくらの種よ」に応じて「一本植えれば千本になる」と唱えながら苗を植え終わるまで繰り返す。
田植えがすむと神職、幹事長、作男の順に胴上げをし、作男は用意された甘酒を一杯ずつ飲み、田打ちに使った餅鍬をいただいて帰る。