主として地元の若者たちによって上演された芝居を地芝居といい、その主流は歌舞伎であった。歌舞伎の出し物のなかで観客が喜び、演じがいのある人気演目は、「忠臣蔵」が最高で、つづいて「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」「絵本太閤記」などがあった。
伊達騒動から取材した「先代萩」で、すこぶる無骨の又兵衛さんが女役の政岡を演じて、村の評判になったという歌舞伎も栗田にある。赤沼や東横田で見られた曽我物は、五郎・十郎兄弟が苦心のすえに親のかたき工藤祐経を討ったことから、大願成就の物語として人気があった。南長池では、国定忠治の「赤城の子守歌」など博徒の義理人情を扱った股旅物(またたびもの)も人気演目として出てきた。今井、岡などでは、尾崎紅葉の「金色夜叉(こんじきやしゃ)」をやったし、太田では徳富蘆花(ろか)原作の「不如帰(ほととぎす)」を上演した。柴・塚本では、出し物は不明だが若い衆が村芝居をやった。また、日方のように、鳥居再建のときなど特別の年だけ出されたところもある。
いずれの地区でも、村でまつる神社の祭りの余興として、拝殿を利用したり、荒むしろを垂らした臨時の仮設舞台をしつらえたりして演じられたところが多い。
買芝居が出るようになってからは地芝居がだんだんと減ってしまった。