はじめに

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 こどもの誕生から成長、婚姻、そして死を迎えるまでの人の一生において、その成長過程や節目ごとにはさまざまな祝いごとがおこなわれる。

 これらの祝いごとや風習は、個人の一生の各過程においておこなわれるものであるが、同時に家庭生活を中心としておこなわれる祝いごとでもあり、また親類関係や近隣、村とも関連する社会的なもので、形を変えたり簡略化されたりしながらも今に伝えられている。

 たとえば、こどもが生まれるとウブタキといって、親分、仲人、親類などを招いて祝いの膳(ぜん)が設けられた。また、ボコのお歳暮などといって親元や親類からその年生まれた男の子には菅原道真、女の子には紫式部などの掛け軸が贈られるなど、生まれたこどもにたいしてさまざまな祝いごとがおこなわれた。

 また、こどもが成長して年ごろになると、かつては家柄などを考えて見合いの相手が親や親類のあいだで決められた。よい縁組であるということになれば、もらい方はくれ方に風呂敷をもっていく。縁談が承諾されない場合には風呂敷は返されるが、風呂敷が納まると承諾されたことになる。こうして結ばれた二人のなかには、婚礼の当日に初めて相手の顔を見たという人も少なくなかった。婚礼の披露宴は北信流といって、長老などの指示によって、宴の節目節目にさまざまな謡(うたい)とともに杯ごとがおこなわれることが多かった。

 死を迎えたときにおこなわれる死者を弔うための葬式にもさまざまなやり方があり、土葬のときには庚申(こうしん)講などの講仲開が穴を掘ったり、棺を運んだりするなど、近隣や村の人びとが深くかかわっておこなわれた。