家の財産などを譲ることをサイフワタシ・シンショウワタシといい、死亡することによって譲られることをシニユズリといった。多くは長男が相続するが、男の子のいない場合は長女の婿が相続する。また、家事いっさいを姑が嫁に渡すことをシヤモジワタシ・コメビツワタシといい、財産などを譲ったときに嫁に渡すことが多い。田子では嫁に来て十四、五年たってこどもが学校へいくようになったころ、「もうおれも年だから、お前たちやれ」などいわれ財布が渡されたという。そして、夫に財布が任されると同時に、姑がおこなっていた親類や近所とのつきあいなども嫁がするようになる。
こうして財産などを譲り渡すと同時に親は隠居することが多く、インキョベヤ・コベヤなどといわれる部屋に移る。別棟の家に隠居するということは市域にはあまりなかった。