死の予兆と忌み

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昔から人びとは死を深く恐れてきた。そしてその結果、死の予兆といわれる死者の出現のきざしに強い関心をいだくことになった。

 市内の多くの地域においては、からす鳴きが悪いと死者が出るとか、からすの尾の向いている方向に死者が出るというような、からすによる死の予兆が伝えられている。

 からすのほかに、瀬原田(篠ノ井)では鶏が夜中に鳴くと死者が出るといわれているし、中川ではつばめが家に巣を作らなくなると死者が出るとか、ねずみが家のなかでカタカタしなくなると死者が出るなどともいっている。このように動物の行動と人の死を関連させていうところが多いが、そのほかにも、うどんげの花が咲くと死者が出る、味噌(みそ)が腐ると不幸がある、歯の抜けた夢を見ると死者が出るなどといったように、植物や食べ物、あるいは夢見と死との関連を伝えている地域も少なくない。

 また戸部では仏壇の灯明や線香が急に消えると死者が出るなどともいい、犬石では火の玉を見た翌日にその家のものが亡くなったようなこともあったという。

 また、死者にたいする行為と同じ行為を忌むことは多い。着物を左前に着てはいけないとか、御飯に箸(はし)を立ててはいけない、また箸渡しをしてはいけないなどというものである。

 そのほか、自分と同年齢のものが亡くなったときには、尾頭付きの魚を食べたりして年取りをしたというところもある。十二では升(ます)の陰で、四ッ屋や長谷などでは箕(み)の陰で年取りをしたというし、赤柴ではこのときに焼き餅を食べたりした。