臨終

281 ~ 282

いよいよ亡くなりそうになると、近親者たちが集まり、臨終を見守る。

死ぬことを一般的に「亡くなる」「仏になる」などということが多いが、そのほか「目を落とす」といったりもする。また死ぬとは墓地に行くことと考え、犬石ではしだいに年寄りになっていくことを「オオビラ(犬石地区で墓地のある場所の地名)に近くなる」などといったりもした。

 家族のなかで若い人のほうから亡くなっていくことをサカサフコウ(逆さ不幸)といったりするところもある。

 「目を落とす」と跡取りのこどもや、その配偶者をはじめとした近親者などが水を含ませた綿などで死者の唇を濡らすが、これを「死に水をとる」という。そして死者を北枕にして寝かせ、その上に、はさみや鎌(かま)、刀などの刃物をのせたりする。これは猫や魔物を寄せつけないためといわれている。桜枝町では猫が死体をまたぐと死者が踊りだすなどと伝えている。

 また、死者の布団を重ねると葬式がつづくといい、布団はかならず一枚にするものだという。そのほか、死者の枕元に逆さ屛風(びょうぶ)を立て、着物を逆さにして布団の上にかけたりもする。

 死者を安置するのは座敷や仏間であるというところが多い。また神棚を半紙でふさぎ、これをメカクシといったりする。

 亡くなった日の晩、死者にごく近い身内のものたちは故人の思い出を語りながら一夜を過ごす。これを通夜といい、このときは灯明や線香の火を絶やしてはいけないといわれている。