屋敷地を選ぶには、こうした安全面や水の便の善し悪しといった物理的な条件とともに、墓地や神社・寺院跡、火葬場跡などのような場所はたたりがあるとか縁起が悪いからという精神的な理由から、忌(い)み嫌われてもきた。また、屋敷の形が三角形の三角屋敷とか村のなかでも鬼門にあたる方角の場所も、忌み地といって嫌われてきた。
このように以前ならば屋敷地としては売買の対象外であった忌み地も、最近では公園にしたり工場を建てたりしている例もみられるようになってきた。
しかし、ものの考え方や意識の多様化が進み、科学的な知識をもつ現代人にあっても、こうしたいわれのある土地にたいする精神的なこだわりはなかなか抜けきらない。先の例のような公共用地ならばいざ知らず、大切な日常生活の場としての家屋敷を確保するとなると、わざわざそうした忌み地を選ぶという例は少ない。それにたいして生命に直接かかわるはずの山崩れや水害など、安全面に心配のある土地の場合のほうが、近年の土木技術の発達によって解消されたかのような傾向がある。急傾斜地を削って山の中腹に住宅が建ちならぶ光景や、今まで水害に何度となく見舞われてきた大河沿いの危険箇所に大団地が造成されている姿は、最近市内各地でみられるようになってきたのである。