はじめに

372 ~ 373

 私たちの生活は、私たちを取り巻くさまざまなものとかかわりながら展開している。それは親しい人や地域の人、あるいは初めて出会った人などとのかかわりであったり、神や妖怪(ようかい)などといわれるものとのかかわりであったりする。また、そうした多様なかかわりを生みだす自然環境や社会環境とも密接にかかわっている。山の神や風の神を見いだし、お化けや幽霊などと出会うのも、そのような環境のあり方と無関係ではない。危険な山仕事への従事や台風の脅威、不安と、複雑な人間関係のなかなどで、そうした超自然的な存在が活躍するからである。

 私たちを取り巻く環境は、時間の経過のなかでさまざまな姿をあらわす。時代の変化は社会環境や自然環境を変える。実り豊かな耕地が住宅地に変わったり、地域社会において重要な役割を果たしていた祭りからいつのまにか神は姿を消し、大勢の人を集めるイベントになってしまったりする。親は老い、親しい友とも遠く離れてしまう。時間の経過はそのような環境の変化によって意識されるともいえる。

 このような変化のなかで私たちの生活は展開されている。もちろん生活は一定の場において営まれるのであるが、それだけではなく時間の推移に応じて生活が形成されているのである。そうした意味において私たちの生活は時間とともにあるといってもよい。