ムラヤクとウチワ

400 ~ 400

ウチワはヨルナカ(寄る仲)ともいい、本・分家関係を軸として親分子分関係、仲人や婚姻関係などでつながる助け合いの関係であるが、このほかに遺族とウチワを除いた村内の全所帯から各一人ずつの、多くは男性が手伝いに出ており、ムラヤクとよばれる。ムラヤクは告げ人やヤキバの設営、火葬の管理、買い出しなどを受けもっていた。近ごろは電話が普及し自家用車の数も増えたため、告げ人や買い出しは人頼みにせずに遺族が自分たちでおこなうようになってきた。また、村内の火葬場がなくなったので、火葬は行政が管理するようになり、ムラヤクが直接、葬儀の運営にかかわる場面は極端に減った。とはいうものの、実質的には村全体の二三戸で葬儀を支えている。そして葬儀にもっとも深くかかわっているのは、ウチワである。現在でも葬儀全体の進行や喪家での弔問客の接待あるいは食事の準備、こまごまとした手伝いなどを任されて活躍するのはウチワの人びとである。不幸が生じると、喪家のウチワにあたる家はそれぞれ夫婦二人で手伝いに駆けつける。