オイヌシの存在

410 ~ 411

オイヌシとは「葬式や婚礼で主婦のようにいっさいのまかないを任せる人」だと考えられる。オイヌシをだれに任せるかということは、集まった人びとのあいだで「あの人がやるべきだ」という共有された感覚があり、それ以外の人がやるとおかしい。しゃしゃり出たという感じになってしまう。それぞれの家では、以前からウチワのなかの一軒が定められており、その家の主婦が原則として喪家のオイヌシをつとめ、同じ家の家長が葬儀全体の進行の総指揮をとる亭主役を引きうけていることが多い。村内に住む二三戸のうち、二〇戸は本・分家のあいだで互いに亭主役やオイヌシをおこなっている。

 夫婦そろっていないと仲人は頼めないが、親分や亭主役、オイヌシは頼むことができる。前にみたように夫婦の片方がすでに他界している場合は、夫婦でなくとも他の家のものに亭主役もしくはオイヌシを頼んでやってもらうこともある。また、最近ではあまり堅いことをいわなくなってきたので、そのようなまとめ役が苦手な場合には、いちおう名前だけ貸して得意な人に代行してもらうこともある。集まったウチワのもののなかでの相対的な年齢も大きく影響する。亭主役やオイヌシを引きうけたとしても、自分よりも年長で仕事全般をよく心得ている年長者がいる場合には、その人に相談しながらことを進めていく。