はじめに

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 長野市は、かつては善光寺平とよばれた長野盆地のほぼ中心部に形成された都市である。その西側には西山とよばれる山間地が存在し、東部に位置する須坂市との境には千曲川が流れ、また市域のほぼ中央には西から東に向かって犀(さい)川が流れている。長野市の市街地は、善光寺を中心として早くから形成され、またその東南部にはかつて城下町として市街地をかたちづくった松代の町が存在している。

 こうしてみると長野市域には、①市街地、②その周囲に広がる平坦(へいたん)地、③さらにその外側に存在する山間地という、性格の異なる三つの場が存在しているということができよう。ここではそれらを、それぞれ町・里・山とよぶことにする。町・里・山は、概念的なものとしてとらえる場合もあるが、ここでは長野市域における地形にそくした実態的な面からそれらをとらえておきたい。つまり、善光寺を中心に門前町あるいは商業地などとして古くから栄え、日常・非日常にかかわらず人びとがさまざまな形で集まってきていた場を町、その周辺に存在する農業地を里、さらにその周辺に存在する山間地を山と位置づけることにする。ここでは、町・里・山の様相とその変化を概観したうえで、町と里のいくつかの交流についてみていくことにする。