職人は、符丁(ふちょう)といって仲間うちでしか通用しない独特の表現をもっている。たとえば「あいつはサシだぜ」といえば、「あの人は畳屋だよ」と同業者をさしている。畳職人は、依頼主の家で作業をするため、とくにその家の人にわからないようなことばを使っていた。主に道具の名前を符丁として使っている。男性のことは「長サオ」、酒のことは「イタ」という。そして「焼イタ」は焼酎(しょうちゅう)のことをさしている。「ハバが小がねもってきたぜ」とは、「奥さんがお茶をもってきてくれた」という意味である。ハバは奥さんを示し小がねはお茶を意味するが、いずれも道具の名称である。
表2-7は、畳屋が使っている数字の符丁であるが、これと同じ符丁を荒物屋と履物屋も使っているという。