職人の集まりには、組合による事務的なもののほかに信仰的なものがあった。信仰的な集まりの代表的なものは、職人の神様として聖徳太子をまつる太子講であった。
長野市内の畳職人の組合である長野県畳商工組合長水支部では、組合ができたときに職人たちがまつる聖徳太子像を作った。太子講は四月におこなわれており、祭祀(さいし)を執りおこなう神職はとくに決まっていないが、おまつりしてもらってから、研究会を開催し、そのあとは直会(なおらい)になる。この支部の太子講は、弟子の修了式も兼ねており、弟子入り後五~七年たち、一人前と認められて年季あけした職人たちはこのときに組合から表彰される。その後は一人前として扱われるようになった。太子像は支部長の家に置かれている。
松代町の畳職人たちが集まる組合でも、聖徳太子をまつっている。浄土真宗のお寺には、聖徳太子がまつられているため、毎年京都の西本願寺に組合で旅行しているという。年番は二年交替でつとめている。組合では聖徳太子の掛け軸をもっているが太子講というものは特別にはおこなっていない。しかし、毎年一月十二日の新年会のときに掛け軸を掛けて聖徳太子をまつっている。写真2-48をみると、職人たちは聖徳太子を「我工祖」としていることがわかる。組合員に不幸があった場合などは新年会をおこなわないこともある。