しかし、それでも家の外の世界にたいする関心はしだいに強くなってくる。吉(よし)(若槻)では、夏、雷が鳴ると、こどもは「雷さん 雷さん 越後のほうへくらっとくれ」といったし、泣いたのにすぐ機嫌を直したりしたこどもにたいして、太田(吉田)では「泣いたつらどこへやった 善光寺参りにくれてやった」とはやしたてたという。雨が降りつづいて遊びに出られないときに、南俣(芹田)ではこどもが、庭先の水たまりに雨によってできて流れていく泡を見ながら「つぶつぶ山へ行け おらやだ われ行け 去年の春行つたれば からすという 黒鳥が あっちつっつき つん回し こっちつっつき つん回し 二度と行くまい あの山へ」などという歌を口ずさんでいた。このような唱えごとなどは、いずれも子守りなどをしてくれる年寄りから教わることが多く、その意味はかならずしも十分わかっているわけではないが、家の外の世界にたいする関心は、知らず知らずに養われていった。