自然にたいする知識は、そのこどもたちの置かれた自然環境と深くかかわっている。家の周囲が主な活動の場であったこどもたちも、しだいに遠くにまで出かけていくようになる。かつての男の子たちが集団で遊んだ戦争ごっこなどは、かなり広い場所においておこなわれた。農村のこどもは秋の取り入れのすんだ田んぼなどを何枚もあいだにはさんで、田のあぜ道や田の高低差をはかって陣を構えた。山のこどもたちは、複雑な地形や木々を利用して、対抗しあった。それぞれの陣の構え方や戦法は、その環境に応じてたてられたのである。
親しい仲間と秘密の基地を作った経験のある人も多い。農村のこどもたちはせいぜい家にあるタワランバセ(さん俵)やわら縄で、屋敷の木の枝の上に鳥の巣状のものを作る程度であったという。しかし、山と関係の深い村のこどもたちの作ったのはその程度のものではなかった。小市ではこどもたちが立木を利用したり、大木の枝のうえなどに、藤づるで枝や竹などをからげて小屋を作った。こどもたちだけで、山のものを使って小屋を作るためには、それぞれの材料の特徴をよく知っていて、それをもっともよく活用する技術を身につけていなければならなかった。