村に入ってくる道や辻(つじ)などに樹木を植えたり、石造物をまつったりするところは各地でみられる。この地点は村の内と外とを分ける境と意識される重要な場所であり、まつられる石造物には馬頭観音(ばとうかんのん)碑や地蔵、道祖神碑などがみられる。これらのうち、とくによく目につくのは道祖神碑である。
道祖神碑がまつられる場所は村境や辻、路傍、集落の出入り口などであることが多く、このことからも、道祖神と境とのかかわりが深いことを思わせる。そして、その祭りにも村境や村はずれなどの境を意識した習俗を多くみることができる。高岡(若穂保科)では集落の出入り口に二ヵ所(下組・中組)と中組・上組それぞれの中心部、そして三島神社裏に道祖神碑をまつっている。中央と出入り口にあたる中組と上組の三ヵ所の石碑は、平らな自然石を組み合わせた石室に納められており、小正月には木像の人形が供えられる。これらはいずれもドウロクジンとよんでいる。
道祖神碑の形態は男女の双体像や文字碑が多いが、陰陽石や自然石などを道祖神としてまつっている例もある。また、男根の形をしたツクリモノや掛け軸、厨子(ずし)に納められたものなどもあり、まつり方はさまざまである。そして、この神は境を守る神、道の神、厄よけの神、こどもの守り神などとされ、縁結び、子宝の神としても信仰されている。われわれの暮らしを守るとともに、もっとも親しみやすい身近な神のひとつである。道祖神をドウロクジンとよぶところが多いが、なかにはサイノカミ、サエノカミとよぶところもある。その対象は石碑、ドンドヤキなどの火祭りのツクリモノであったり、火祭りそのものであったり、あるいは木の人形、樹木であったりする。