小正月

655 ~ 656

農家において、集落の安全を守ると同時に、作物が豊作に恵まれることはもっとも重要な願いのひとつであった。この豊作を祈る行事は、年中行事のなかでもとりわけ一月十四日・十五日を中心とする小(こ)正月に集中しておこなわれている。そのため、小正月は「百姓の正月」、「百姓の年取り」などといわれている。それらは、小豆などで農作物の作柄を占うもの、鳥追いやドンドヤキなど病気や災厄を取りのぞこうとするもの、繭玉、成木責め、田植え神事など農作物の豊かな実りを予祝するものなどである。これらの行事と合わせて、長野市では道祖神の祭りが各地でおこなわれている。

 小正月と道祖神の結びつきは明らかではない。しかし、年中行事のなかでもっとも規模の大きい火祭りと、村境などでおこなう小正月が結びついていることは、村境などに多くまつられている道祖神の性格と、小正月の性格とのあいだに密接な関係があることをうかがわせる。