このような藁人形は、越からさほど遠くないところに位置する平(ひら)(篠ノ井塩崎)でもおこなわれている。山間傾斜地にひらけた一七戸の集落であるが、とくに道祖神碑などは存在しない。 一五~三五歳の独身男性が家々を巡って注連(しめ)飾りやお札を集め、前年に結婚した家が当番になりオンマラサマとよばれる藁人形を作る。十字に組んだハゼンボウに頭、腕、指、胴体、足などの順に藁を束ね、最後にオンマラとキンタマを取りつける。つぎに、お札を頭や指先など全身にはりつけ小袖(こそで)の着物とし、頭に角(つの)隠しをつける。そのため上半身は女、下半身は男の姿になる。そして、右手に筆、左手に大福帳をもたせる。できあがるとドウロクジンバにかついで運び、注連やダルマを置いて完成する。
また、ドンドヤキの煙を家の中にまわすと蚕がよくあたる(よいできになる)、焼け残りの木をもち帰り屋根に上げておくと火から家が守られ火災よけになる、風呂をわかして入ると無病息災になる、などといわれている。人形に集落中の厄を背負わせ、ドンドヤキで焼いて外に追い払うのだという。