御神体としての男根

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上深沢では人形といっしょに男根を作って道祖神碑に供える。篠ノ井や日詰(ひづめ)(芹田)などではこのツクリモノを神像として恒久化している。日詰には道祖神講が五組あり、そのなかで西組と宮下組には道祖神碑がないため、木製のオンマラを御神体として当番の家に一年間まつっている。この二体の御神体には「衢祖神」と彫られており、地区の人がドンドヤキの心棒に使った松から根の部分を西組、幹の部分を宮下組のものとして天保十四年(一八四三)に作ったものである。西組では家順で当番をつとめ、若い夫婦のいる家が当番になるとその家は子宝に恵まれるといわれ、つぎの当番に引き継ぐとき若い嫁がいると子宝を願って御神体をかついで追いかけたという。また、見六(篠ノ井)ではドウロクジンサンまたはカミサンとよび、松で作った御神体を新婚夫婦などがドンドヤキの火や煙であぶって、厄払いするとともに子宝祈願をするという。

 いずれにしても、男根のツクリモノも道祖神の祭りにおいてさまざまに用いられるが、なかには道祖神の御神体として恒久的にまつられる場合もある。毎年人形とともに作られるものは神体と考えられることは少なく、縁起物や供物として用いられることが多い。


写真2-121 御神体(芹田日詰 平成6年)