芋井では「芋井講」という戸隠講がある。講は芋井の三〇集落が加入しており、全体をまとめる講元がいて、さらにそれぞれの集落ごとに世話人をおいている。そのうち広瀬集落は、平成四年(一九九二)では二四戸の集落であるが、一五戸が芋井講に入っている。毎年五月十二日に二人が戸隠に代参することになっている。代参すると宿坊でお茶を飲んで休憩してから宝光社で太々神楽を奉納する。平成四年には講が結成されてから一〇〇年を迎え、百年祭をおこなっている。
広瀬ではこの芋井講のほかに「楠川(くすかわ)講」という戸隠講が組織されている。楠川講は広瀬集落だけで結成され、かつては集落の全戸が加入していたが、現在は一九戸でおこなっている。結成してから六十数年たつという。毎年五月十六日に三人の代参が宝光社に参詣する。以前は代参とは別に田植え後には、広瀬集落の農休みを兼ねた豊作祈願祭として戸隠に参詣した。このときはまず戸隠神社中社に参詣してから宿坊に行き、直会(なおらい)をした。この参詣は集落行事となっていたので、参加者は楠川講に入っているかどうかは問わなかった。こうした農休みとしての戸隠講も十数年前から、日帰りの温泉旅行に変わっている。
そのほか、戸隠には雨乞いで参詣することもある。かつては区長がフレ(触)を出して九頭龍権現(くずりゅうごんげん)に参詣していたが、近年では農協や芋井の区長会が主催して雨乞いの戸隠参詣をおこなっている。また広瀬では土砂崩れを防ぐためのノケドメの九頭龍信仰がみられる。
広瀬のように、同じ宝光社の聚長の講だが、二つ重複して存在する場合もあって、あとで述べる田子(たこ)(若槻)などでもみられる。また、主として宝光社に参拝する講と、中社に参拝する講が、同じ地区内でも重複して存在する場合もあり、西平(にしひら)(浅川)、東横田(篠ノ井横田)などでみられる。