お加持の構造

729 ~ 730

先達にとっては、この御座において何の神霊がおりてきたか、そしてどんな祈願が希望されたのかなどいっさい覚えていないという。すなわち先達の自己は消え、神霊が憑入(ひょうにゅう)して身体は入れ物にすぎなくなっている。

 この御座における個別の加持は、B家の霊神となった先代によってなされる形となっている。もっともこれは、A先達がそのことを承知していて潜在意識にあるからおりてこられたといえる。

 清滝不動によって家や家族全体のお加持がなされ、十二権現によりこどもの加持がおこなわれ、さらに先代の守信霊神により、家族個別の加持が執りおこなわれたという構造になっている。先達によれば、状況を見て守護神である清滝不動が、十二権現、守信霊神をよび寄せたという。

 イッポン座において先達に何の神霊がおりてこられるかは、そのときによって異なるというが、清滝不動は前述したようにかならず初めに降臨する。また十二権現も、お加持前に床の間にお札を並べたように、こどものいる家ではかならず降臨するらしい。それ以外はその場に適した神霊がおりてくるのである。

 柴での御獄講はなくなってしまったが、このように有能な先達を介してその信仰は息づいているといえる。また、御獄行者は集落や地域を越えて広く活動しており、御座のできる行者が少なくなれば、より活動範囲は広がっていくのだろう。そして講の先達として、また家々の要望にこたえて正月の家祈祷(きとう)のほか、さまざまな儀礼をおこなっている。