松本教会長野支部では、教師間では結婚式場などの仕事を通じて互いに交流を保っているが、信徒と一体化して活動するのはこの御嶽登拝である。教師は、伝統的な御嶽行者や先達といったような宗教者とは異なり、御嶽教の祝詞を中心とした教本をもとに祈祷する神道的な宗教者である。御嶽信仰の祈祷法である「御座立て」もおこなうことはなく、仏教的な経文を唱えることもない。御嶽教の神事講習会などによって九字を切る祈祷の仕方は知っているが、執行することはなく、したがって祈祷法は神社の神主とあまり変わるところがない。ただ、信条とする教えは御嶽教によっているということであり、木曽御嶽を信仰対象として神観念が形成されているということであろう。
御嶽教の教会の多くは伝統的な御嶽講が教会化した場合が多いので、かならずしも御嶽教の祈祷法に準じているわけではない。長野支部においても初代の支部長は、在地的な御嶽信仰によって祈祷あるいは修行をしていたようである。支部の継承が、行法の継承というよりは教派としての支部組織の継承となったために、神道色が強くあらわれているのであろう。御嶽行者や御嶽講とは別の、教派に依拠した御嶽信仰のあり方として注目される。