はじめに

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 仏教が地域社会に受け入れられ、定着する過程において、仏教とその土地に根づいている習俗や信仰との接触のあり方にはさまざまなかたちがみられる。たとえば、仏教がいままでの民俗を積極的に取りこむ場合や、いままでの民俗を排斥しようとする場合などが認められる。こうした接触のあり方は仏教の宗派によって違いがみられるが、なかでも浄土真宗は民間の信仰における祈祷(きとう)や呪術(じゅじゅつ)的側面について否定的に対応することで知られている。それは、浄土真宗が門徒にたいして念仏にもとづく生活実践を求め、祈祷や物忌みをしないように教化してきたことと関係している。

 「門徒物忌みせず」とか「門徒物知らず」などといわれるように、真宗門徒の民俗において、他宗檀家との違いが認められる。それは、位牌(いはい)や祈祷札をまつらないとか、盆棚を飾らないとか、正月に注連縄(しめなわ)を飾らない、節分の豆まきはしない、出産や死の物忌みなどにあまりこだわらない、といった点である。こうした違いとともに、さらに真宗門徒の生活に着目すると、特色のある行事や信仰がみられることも確かである。