真宗の門徒が比較的に多い農村地帯であった旧古牧村の西尾張部・若宮・上高田・五分一、そして旧芹田(せりた)村の稲葉などの集落では「名号(みょうごう)」をまつっている。本山などからうけた名号の掛け軸で、文字数によって四字名号、六字名号、九字名号、十字名号などの別があるが、たいていは「南無阿弥陀仏」の六文字を書いた六字名号である。上高田・五分一・稲葉では、公民館を兼ねた名号堂にまつっている。西尾張部と若宮は、合同で両善講をつくり、当番の家に集まって六字名号をまつる行事をしていたが、現在は中断しているようである。両善講は明治時代に成立したものという。上高田では老人会が中心になって三月下旬ごろにおこなっている。五分一では因(ちなみ)講をつくり、四月におこなっている。稲葉では日詰(ひづめ)公民館に六字名号をまつっている。山間部の旧浅川村の西平(にしひら)集落では、明治時代に廃寺となった真宗寺院の御本尊を集落で譲りうけてお守りするというかたちをとっている。御本尊は説教所を兼ねた公民館にまつっている。
これらの集落にみられる真宗の行事は、門徒だけではなく他宗檀家をも含んでおこなわれ、集落をあげての行事となっているのである。ここでは、五分一と浅川西平をとりあげてみていくことにしたい。