日本全国には北から南まで屋台、曳山(ひきやま)、笠鉾(かさぼこ)などが登場する数えきれないほどの祭りが存在する。そのなかでもっとも規模が大きいのが祇園祭である。しかしながら、いわゆる「祇園祭」には、狭義の意味で、素戔嗚尊(すさのおのみこと)・牛頭天王(ごずてんのう)をまつる神社で祇園祭とよばれておこなわれているものだけではなく、広義の意味で、その影響を受けてさまざまな名称でよばれている祭りも含まれている。信州の祭りをみても、祇園祭が何らかの影響をあたえたであろうと思われる祭りが北信地方から南信地方にいたるまで広く分布している。長野県の祇園祭には八坂系のものと津島系のものとがある。また、現在では祇園祭がおこなわれなくなっているところでも、かつては村の鎮守の森に八坂社や津島社があって、五穀豊穣(ほうじょう)、疫病退散、家内安全を祈願する祇園祭が夏の風物詩となっていたところが少なくなかったと思われる。