法灯採火の儀式

784 ~ 786

長野びんずるは、夏祭り前夜祭(火と水と音楽と若者たち)を受け継ぐものであったが、それまでの「火と水と音楽と若者たち」が、雨にたたられっぱなしだった苦い経験を踏まえて、祭りの期日は降雨確率が低い七月末または八月第一週に設定された。なお、長野びんずるが中止となったのは地附山(じづきやま)の地滑り災害のあった昭和六十年だけである。長野びんずるでは、善光寺でともし続けられてきた法灯から火を運び、市内各所に配置された火釜(ひがま)に点火して踊りが開始される。善光寺の法灯から祭りの火を採る儀式はつぎのようなものであった。

① 善光寺法灯から善光寺僧侶(そうりょ)の手による採火。

② 採火された聖火が厨子(ずし)に納められ、市長に手渡される。これは「伝達の儀式」とよばれる。

③ 各連が掲げる目印(高張提灯、幟(のぼり)など)を先頭に、役員、実行委員が厨子に納められた聖火を運ぶ。なお、連灯籠の目印(高張提灯、幟など)は御祭礼の灯籠揃いのイメージによるものである。

④ 第一火釜(大門町五明館前)に運ばれ、点火する。

⑤ 点火と同時に、花火が打ち上げられ、それと同時に中央通り九ヵ所に設置された大火釜にもいっせいに火がともされる。

⑥ それを合図にびんずる踊りが開始される。


写真2-163 長野びんずる採火式(平成7年)
善光寺提供

 祭りの開始から終了までの日程は、平成九年の「第二七回長野びんずる企画書」(長野びんずる長野地区実行委員会)によれば、つぎのようなものであった。

午後五時    善光寺御本堂に参列者集合、受付

午後五時三〇分 参列者御本堂内陣に着座(連長は履き物を袋に入れ持参)

        会長、副会長、実行委員長、副実行委員長、常任委員、市民代表者(連責任者)、各連提灯

午後五時五〇分 善光寺御本堂で採火の儀式

午後六時一五分 法灯出発、善光寺御一山は、山門まで見送り

        行進の順序は、チアガール、ブラスバンド、先導(青年会議所二名)、幟、第二灯籠群(踊りロード参加連)、第三灯籠群(踊り広場参加連)、第一灯籠群(演舞場参加連)、太鼓、会長・副会長・役員、法灯、灯送り衆の順となっている。

午後六時五〇分 分火式、挨拶 実行委員長

午後六時五五分 開会宣言、挨拶 名誉会長

午後七時    びんずる踊り開始

午後九時五五分 びんずる踊り終了


写真2-164 ある連の連長(連の代表者)(善光寺 平成9年)

 善光寺境内での灯籠揃いには連長(連の代表者)と副連長が参加するが、連長が祭りの火を採る儀式に列席する。祭りの火を運ぶ方法は、年によって少し違っているが、厨子に納められた法灯を中央通りと昭和通りの交わる新田町交差点に設置された大火釜まで運び、そこで聖火を分火して、「灯火衆」とも「灯送り衆」ともよばれる若衆たちによって、各所に設置された火釜まで運び、花火の合図とともにいっせいに点火されて「ソーレ!」という掛け声とともに踊りが開始される。