お祭りが好きで、長野で神輿をかつごうと願っている人ばかりが集まって作った神輿保存会が善睦会である。平成二年に会ができたときには、上田市別所の神輿を借りてきて、長野のびんずる祭りでかついだ。平成九年三月現在、約百七十人の会員がいる。そのうち女性は約六十人。同級生や友達に声をかけて仲間を募った。善光寺平一円に住む人たちである。現在、会独自で信州の有名な伝説を絵にはめこんだ万灯神輿を作り、長野びんずる祭りでは、一〇〇人ばかりが集まってかつぐ。浅草の三社祭り、九州の福岡山笠祭り、東北の山形雪祭り、伊勢神宮の祭りなど、全国の祭りの神輿かつぎにも参加している。県内では、上田の真田祭り、戸隠神社の御柱祭り、飯山の雪祭り、市内では柳町・浅川・上松・東町・県町・千歳町・篠ノ井(えびす講)、それに豊野町などの神輿かつぎをやっている。おむすびをごちそうになったり、お酒やビールをいただいたりするが報酬はもらっていない。町内とのトラブルは、「わっしょい」という掛け声でかつぐか、「セイヤサー」の掛け声でかつぐかの問題であった。「わっしょい」の掛け声だと横に揺らしてかつぐのに都合がよいが、「セイヤサー」のほうは狭い路地を足並みをそろえて上下に揺らしてかつぐのに都合がよいという。また、ふんどしでかつぐことをめぐって地元と議論になることもある。
神輿かつぎの協力をしていて一番の願いは、地元の若い人が祭りに出てきてくれることである。「じゃあかつぎましょう」といってくれるまでいかなくても、見てくれるだけでもいい。町によっては祭典委員が動いているだけで、一戸一戸に浸透していないところもある。地元にかつぎ手がいなくて、役員だけがかついでいる町もある。「楽しい神輿になる」か「つらい神輿になるか」は五人から一〇人のかつぎ手の数の違いで全く違ってくる。たとえば、かつぎ手が五〇人から六〇人ではつらいが、一〇〇人になってくると楽しいものになる。「長野市の地域では、かつぎ手だけでなく見るだけの人も少ない」という感じがするという。長野市の地域性とか性格とかがあって、はた目に見ているだけでいっしょになってやろうという姿勢が弱いように思われるという。棒があいていたら飛びこんで神輿をかつぐ人が少ない。こちらが押しこまないと入ってくれない。神輿自体に慣れていないかもしれないが、新しいことをやることにたいしてものすごく慎重すぎる面もあるのではないかという。会としては、「眠っている神輿を起こそう」とよびかけても、実際に実現するためには、役員の大変さはあるし、お金の面でも大変である。でもこちらはお手伝いに終始して、地域の文化遺産を後世に残していきたいのだという。組織は、会長一人・組頭一人・宮頭一人、その下に小頭が十数人いて、会員にいつどこで神輿をかつぐかそのつど伝達をしている。
この祭り好きの仲間の活動は、かつての祭りのにない手が村や町ごとの若者組であった姿から、地域の境界を越えた本当にお祭り好きな若者たちの活動への変化である。一つの地域に閉じこもるのではなく、幅広く同好者が横につなかって、町のお祭りを応援していこうとするもので、現代の祭りの開放的な性格の一つを示すものである。