祭りは古くから神をまつることによって地域の人びとの団結をはかり、日常生活のなかに改まった気分をもたらし、活力を回復しようとするものであった。現在でも祭りのもつそのはたらきが変わっているわけではない。しかし、祭りを維持していくためには、地域の信者組織である氏子の力だけでは困難になってきた。そのため、祭りのにぎわいをつくりだす中心的存在である若者や祭り好きな人びとを、外部からつのることも必要になった。地域の枠を越えて生まれた神輿保存会は、そういう状況のなかで、地域ごとの立場を尊重しながら支援者としての姿勢を維持しようとしている。地元の若い人たちや新しく移り住んできた人びとが、地域を回る神輿の熱気に刺激をうけて、おのずから祭りに参加することで地域の人びとと打ち解け合い、ふだんとは異なった気分を共有することにもつながると考えているからである。その結果、祭りは地元の一定の年齢層の男性だけがその集団内の秩序にもとづき運営していくものであるという意識が薄れるとともに、女性も祭りのにない手であるという自覚を高めつつある。女神輿は客寄せのためのイベントにすぎないという声もあるが、女性の祭りへの登場で男性が刺激を受けいっしょに祭りを支えることの大切さに目覚め、やる気を回復する場となっている。
個人的な楽しみや遊びが多様化し、日常化するとともに、地域の人びととのつながりを意識しなくとも生活していける現代は、祭りを簡素化することになった。しかし、そのいっぽうで町に暮らす人びとが集い、その心意気や協力する姿を見る人にアピールし、同時に地域の人びとの一体感と高揚した気分を取りもどすものとして、祭りは見直され、新たに再生しつつあるように思われる。