あとがき

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 長野市誌全一六巻のうちこの第十巻は、長野市域の民俗を記録記述した民俗編である。第一部「長野市域の民俗」、第二部「民俗の諸相」の二部構成とした。民俗資料の調査と編集・刊行の計画については、すべて市誌編さん委員会と市誌刊行委員会に付議して進められてきた。

 民俗資料の調査は、民俗の概要を把握するために市域を大きく山間部、平坦(へいたん)部、市街地に分け、特定地域の共同調査をおこなうことから始めた。その成果は『長野市誌民俗調査報告書』全四集にまとめて発刊した。平成四年度調査の『広瀬の民俗』、同五年度調査の『田子・山千寺の民俗』、同六年度調査の『「善光寺町」の民俗』、同七年度調査の『城下町松代の民俗』がそれである。いずれの調査においても住民各位の多大なご協力をいただくことができた。

 これを基礎資料としつつ、さらに市全域にわたって個別に調査を進め資料の収集をはかった。また、市域内の地城的特徴を把握するために、各地区の老人クラブ約三四〇ヵ所を対象にアンケート調査を実施した。その結果、数多くの項目にわたる貴重な資料を得ることができた。

 平成七年度からは、調査と平行して原稿の作成を進めてきた。第一部は『長野県史 民俗編』第四巻(北信地方)所収の資料を基礎資料として、その後の調査資料を加えて市内の民俗を概観することとした。第二部は、市域における民俗文化、生活文化の特色を明らかにするため、テーマを設定して記述した。正確で読みやすいものにするために、定期的に開催した部会議のほか、共同調査の合宿の折にもミーティングをおこない、原稿の検討・修正を重ねた。また、写真・図表などをなるべく多く掲載することとした。

 本書の刊行にいたるまでに、多くの方々からご協力をいただいた。調査や資料・写真提供などに快く応じてくださった各機関、個人各位をはじめ、調査協力員、多数の話者の方々に改めて御礼を申し上げる。また、本書の製作にあたっては東京法令出版株式会社の積極的な協力をうけている。あわせて深く謝意を表する。

 長野市誌は、昨平成九年市制施行百周年にあたり四巻を発刊し、本年本巻を発刊した。市誌は以後続刊し、平成十六年度までに完結する予定である。この大きな修史事業が順調に進められるよう、ひろく市民各位のご理解ご協力を切にお願い申し上げるしだいである。

  平成十年(一九九八)十二月十日

長野市誌編さん委員長 中村一雄