監修者 児玉幸多
長野市は長野県の北部に位置するが、そのもとは鎌倉時代より善光寺の門前町として発達したところである。江戸時代の初めに長野村として善光寺領の一部とされたが、村内にいくつもの集落ができて善光寺町と通称されるようになり、幕末には一万人近い集落となった。
維新後の明治四年に長野県庁が置かれ、同二十二年の町村制施行にさいして付近の諸村と合併して長野町となり、同三十年に市制を施行した。その後も付近の町村を合併して、その範囲は上水内・上高井・埴科・更級の諸郡域におよんだので、市街地のほかに農村地域も多くふくまれることになった。
この長野市の発展してきた経過を明らかにするために市誌編さん事業が平成二年に始められ、自然編(一巻)・歴史編(七巻)・旧市町村史編(二巻)・民俗編(一巻)・資料編(四巻)を相次いで刊行したが、これらのすべてを通読することは困難な面もあるので、これを要約した総集編をつくることになった。
これは既刊の各巻の内容を精選・要約したものであるが、単なるダイジェスト版ではなく新たな研究成果などを取り入れて叙述したものである。したがってこの一冊を読めば、長野市域の原始時代から現代にいたるまでの歴史的変化や自然・民俗の特色などの大要を知ることができる。
市民の方にはこれを読むことによって誇りを持っていただきたいし、それ以外の方には長野市はこんなすぐれた歴史を持つ都市であることを知って長野市を訪れる機会を多く持っていただきたいのである。
多数の関係者の協力によって市誌編集の事業が無事に完了することを喜びもし、誇りにも思って筆を擱(お)く次第である。
平成十六年十二月十五日