近年、大気中に排出される二酸化炭素など温室効果ガスの増加により、地球温暖化は現在も確実に進行している。温暖化は地球規模の気候変動を招き、その結果、水資源不足、感染症の増加、食糧不足、海水面の上昇、砂漠化の進行などさまざまな悪影響をもたらし、暮らしや生態系に取り返しのつかない破局をもたらす可能性がある。
都市気候のなかでもっとも注目されているものの一つが、ヒート・アイランドとよばれる都市の温暖化現象である。長野市でも図6のように一九九〇年代前半の調査で、すでに存在が認められる。長野市のヒート・アイランドは、市役所や長野駅などをふくむ市街地域で気温が高く、その高温域から外部にいくにつれて、気温が徐々に下がっていく場合が多いようである。このときの気温差(ヒート・アイランド強度という)は、約四度であったが、五度以上あったという別の調査例もある。
コンクリート建築とアスファルト路面で覆(おお)われた現代の都市は、容易に灼熱化(しゃくねつか)していく。真夏のビル屋上の温度は六〇度を突破する。猛然と上がる気温に各ビルや家庭では冷房用クーラーを稼動させる。自動車の排熱とともに、これら人工排熱が都市気温の上昇に拍車をかける。ヒート・アイランドということばは都市の中心部分が高温になり、等温線の形が島状になることによるが、こうした温暖化現象は新たな都市の環境問題となっている。
周囲を山に囲まれた長野盆地では、冷気が盆地に堆積する「冷気湖」とよばれる盆地特有の現象があらわれることがある。冷気湖は放射冷却の強い夜間に起こる。しかし、このような条件の日は、ヒート・アイランドも起こりやすい。盆地全体は冷気湖によって気温が低くなるにもかかわらず、風が弱い市街地では気温が高くなる。このことが、都市の規模のわりに長野市のヒート・アイランド強度が大きいことの原因の一つと考えられている。
また、最近の調査報告からは、長野市街地の気温分布におよぼす、裾花(すそばな)川渓谷からの山風の影響が明らかにされてきた。それによれば、裾花川渓谷からの山風は、年間を通じて発生すること、日没から数時間のうちに市街地に広く放射状に流れこむこと、ときには、それは冷気の流れこみとして市街地の夜間気温分布に無視できない影響があらわれてきていることなどが指摘された。
二〇世紀の一〇〇年間に、長野市の年平均気温は約一・一度も上昇した。同じこの一〇〇年間に最高気温の年平均値は〇・一度上昇したのにたいし、最低気温は一・六度も上昇している。また、一日の最低気温が零度未満の日を「冬日」とよんでいるが、長野市の冬日の年間平均日数は一八日も減少している。このように、長野市の気温は夏季より冬季の上昇が目だち、夏と冬の気温差は縮まってきている。