温暖化の原因物質である二酸化炭素の排出量は今も増(ふ)えつづけているが、そのほかにも種々の化学物質が排出され、大気汚染が進行している。
ディーゼル車を中心とした自動車の排気ガスや工場・事業所のボイラーからの煤煙(ばいえん)中には、硫黄(いおう)酸化物や窒素(ちっそ)酸化物が大量に排出されている。これらは大気中で変化し、雨水に取りこまれて酸性の強い雨となる。一般にpH(水素イオン濃度)五・六以下の雨を酸性雨とよんでいる。
長野市に降った雨についての酸性雨調査結果をみると、平成十一(一九九九)年度に降った雨はpH五・四から四・六の範囲にあって、年間の平均値はpH四・八である。平成十四年度においても、pH六・七から四・五の範囲にあって平均値は四・九である。これは長野市もつねに酸性雨にさらされていることを物語っている。
酸性度の強い雨が観測されているヨーロッパや北アメリカでは森林が枯れたり、水質や土壌の酸性化がすすんだために、かつて棲(す)んでいた魚類など水生生物が姿を消してしまった湖沼もあり、生態系にも重大な影響があらわれてきている。県内では酸性雨や酸性霧による森林などの被害はまだ報告されていない。
また、酸性雨はコンクリートや大理石の劣化も引きおこす。セメントの主要成分である水酸化カルシウムが炭酸カルシウムになるなど、徐々に分解してコンクリート構造物の破壊をもたらす。鉄などの金属を腐食してもろくしたり、銅像に緑色のさびを生じさせたりする。
ごみの焼却施設が排出源といわれている猛毒の化学物質ダイオキシンも、健康に大きな被害をおよぼすとして、大きな社会問題・環境問題になっている。
冷蔵庫やエアコンなどの冷媒、半導体の洗浄剤などとして使用されたフロンも、大気中に放出されるとオゾン層を破壊する。その結果、有害紫外線の到達量の増大により健康や生態系への深刻な影響が懸念され、国際的にもきびしい取り組みがなされている。
大気汚染の進行を防止し、環境の悪化を防ぐには、地球を温暖化させる化石燃料依存の体質を脱却することである。燃料電池車など化石燃料を使わない車の普及や、水力発電とともに太陽光発電や風力、波力、地熱による発電など自然エネルギーの利用を中心にすえた取り組みが、これからの課題である。