扇状地上の遺跡

93 ~ 94

浅川扇状地の扇頂部に位置する松ノ木田遺跡からは、扇状地を刻む旧流路にはさまれた微高地の東端に前期後半の住居跡八軒、その上段に中期後半の住居跡一軒、西端に後期の敷石住居の一部などが発掘された。前期ではこの時期の土器を特徴づける浅鉢形(あさはちがた)土器(写真22)が多く、さらには滑石(かっせき)でつくられた玦状(けつじょう)耳飾りの破片が三〇点も出土した。それを転用した垂(たれ)飾りや勾玉(まがたま)がほとんどで、住居内からはそれらを加工した玉砥石(たまといし)も検出されたことから、この場で石製装身具をつくっていたことも明らかになった。同じ扇央部に位置する檀田(まゆみだ)遺跡では中期の竪穴住居跡から、頭部のみを欠き両手を広げた土偶(どぐう)と琥珀(こはく)玉が出土している。


写真22 松ノ木田遺跡の浅鉢形土器
(長野市埋蔵文化財センター蔵)

 裾花川が形成した扇状地の扇頂部に刻まれた河岸段丘の縁に立地する旭町遺跡(現在市立図書館の建つあたり)からは、中期の住居跡二軒や土坑などが発掘され、タカラガイを忠実に模倣した土製品(写真23)や未使用の粘板岩製の打製石斧を埋納しか甕(かめ)が発掘され、東北や関東との交流が知られる土器も出土している。


写真23 旭町遺跡のタカラガイ形土製品
(長野市埋蔵文化財センター蔵)