えびす講が過ぎると初雪が舞うことが多かった。積雪こそそれほど多くはないが、それでも一面雪で覆われ、子どもが道路で竹スキーをするようなころには、家のなかですごすことが多くなる。畑の野菜も雪の下になってしまう。春になるまで食べる野菜などは、雪の来る前に採って冬囲いにする。地面に穴を掘り、藁(わら)を敷いて大根・にんじん・馬鈴薯(ばれいしょ)などを入れ、上に藁で覆いをする。庭先の畑など、すぐ掘りだすことのできるところにつくっておくことが多かった。しかし、こうして保存するのは根菜類が多く、野沢菜などは漬け物にした。
「霜にあたったお菜はやわらかい」などといって、秋が終わったころ、畑から野沢菜を採ってきた。日当たりのいい庭先などで蕪(かぶ)を切り、日に干し、しなやかになったころに、軒(のき)下に桶(おけ)を並べてオナアライをし、大きな樽(たる)に漬けこむ。味は霜降りといって塩気を強くする家が多い。そのほか茄子(なす)の葉や柿の皮などを入れ、家ごとに工夫することも多い。春先野菜が採れるときまで保存できるように、主婦がもっとも気配りをする機会の一つであり、嫁が家の味を教えこまれる機会でもあった。
十二月は冬の準備とともに、ススハキ・モチツキなど、新年を迎える準備に忙しかった。松飾りにする松も、今では買うことが多くなった。一時、自然保護ということで、松飾りを印刷した紙を貼(は)るだけになったこともある。しかし、芯松(しんまつ)こそ使わなくなったが、やはり松を飾る家が今でも多い。マツカサを米俵に見立てたり、松を切るときや迎えたときの作法などがあり、正月の松に寄せる気持ちは、なかなか簡単には変わらない。