解説
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善光寺は過去数度にわたって炎上し、そのたびに再建されてきた。本図は享禄4年(1531)の再建にかかわる門その他付属建物の設計図で、作図の年代が明らかな設計図としては我が国に現存する最古のものである。 図は巻子装(①かんすそう)仕立てとなっており、長さ153.5㎝の大巻である。かつては次の9図に分かれていた。 ①楼門建地割図 ②鐘楼建地割図 ③回廊断面図 ④回廊見上図 ⑤熊野三社正面図 ⑥熊野三社側面図 ⑦神明社側面図 ⑧⑨四脚門側面図並正面図 奥書によると善光寺大工遠江守が70歳の享禄4年5月に書いたもので、筆跡からも、また、建築様式からも室町時代後期のものに間違いない。 熊野社の向拝柱の上の桁(けた)が3本あるのは、この時代の信濃の神社建築の特色で、神明社の柱の上に出組(②)(一手先(ひとてさき))のような仏寺様式が見えるのも時代の特色をよく示している。 なお、本図は付属建物だけで本堂のものはない。山門は三間一戸の楼門、鐘楼は袴腰(③はかまごし)付きで、室町時代の善光寺図に描かれた鐘楼と一致し、この図の梵鐘は甲府善光寺に現存している。日本建築史上極めて貴重な図である。 注①巻子装(かんすそう)仕立て・・巻物になっていること 注②出組・・・・・柱上のいちばん簡単な組物は舟肘木(ふなひじき)で、柱から外へ出る組物のうち、簡単なものを一手先または出組という。 注③袴腰(はかまごし)・・・・鐘楼の下部を袴状の板で囲ってあるもの。
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