/ 699ページ
長柄町長 川嶋美董

 

 「父の愛は山よりも高く、母の愛は海よりも深し」この心情は人類の生存する限り不滅である。
 房総のほぼ中央に位置する権現森からは、外房九十九里浜と内房東京湾を、更には遠く麗峰富士を一望に収めることが出来る。この景勝の地長柄町は、自然の美と人情味豊かな郷土であることを心から幸に思う。
 このことは、われわれの先祖であった父母が、子孫への愛情を糧として幾星霜、汗と涙を秘めた歴史の積重ねであることを忘れてはならない。
 そこで長柄町の過去の歩みを探り、現在を見つめ、将来の住みよい豊かな町づくりの道しるべとするため、町史編さんを始めたのは昭和四十二年であり爾来実に十年近い歳月を経てここに完成を見るに至った。
 従来長柄町の歴史や文化については全く未調査であったが、「町民による町民の為の歴史」という編集長、永井義憲博士の方針に従って、町史編纂委員の諸氏が協力一致研究を進め、全町民の方々も、資料の提供に積極的に協力して下さったことはまことに感謝に堪えない次第である。
 また、斯界の権威斎藤忠博士、佐藤達夫東大教授その他の方々の御支援御指導にも心から感謝の意を表したい。
 町民各位には本書を座右の書として愛読され、祖先の願いと教訓を活し、長柄町今後の調和ある発展のために御活用される事を希望し序とする。
  昭和五十二年三月