地名のナガラ

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長い柄と書いて、ナガラと発音するのは特殊な訓みかたであろう。少くともはじめてこの文字を見た時、ナガラと発音する事の出来るものは、この地を知っているものでなければ出来ないのである。ではこの地名はどうしてつけられたであろうか。こころみに『日本地名小辞典』(鏡味完二『日本の地名』付録)の「Nagara」(ナガラ)の項を見ると、
 (1) 細長い地形(自然堤防・河谷・段丘など)この例が多い。
 (2) 「流れる」関東以西に分布〔長良・長柄・長楽(ナガラ)(ナガアラ)・長等(ナガラ)山・名柄・永良・流留(ナガル)・流(ナガレ)〕

 とあり、『地名語源辞典』(山中襄太)は「ながら」「ながらがわ」の項で、ナガラは水の流れに関係することを、ヘブライ語・朝鮮語などまで引用しているが、しかし私たちの長柄が水の流れ、もしくは細長い地形からは説明出来ない。特にこの長柄郡は『延喜式』(9)にその名があり、承平年間(九三一―九三七)成立の辞書『和名抄』(10)に、奈加良と記しているのだから、古い地名である事が判明する。