各地にある長柄

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ところで同じように長い柄と書いて、ナガラと訓む地名が他にもある。すなわちそれらを『大日本地名辞書』(吉田東伍)によって、列挙すると次の如くである。
 (一) 上野(群馬県邑楽郡)長柄郷、『和名抄』にもある古い地名。
 (二) 摂津(大阪市)長柄、平安朝初期の『三代実録』に見え、『古今集』などにもよまれた地、ほぼ四キロをへだてて大阪市北区にもあり。諸説があるが広くこの地一帯が長柄といわれたらしい。
 (三) 大和(奈良県山辺郡)『日本書紀』の神武天皇の所に、臍見長柄丘という地名があるがここであろう。この臍見は穂積であって穂積氏は物部氏の同族、宇摩志摩遅命はその祖であるという。

 地名の同一は地形などから、偶然生ずることもあり得るが、特殊なよみ方の場合には少くともこの間に、なにか連絡があった事が推測される。この長柄という地名はただ現在の長柄町をいうばかりでなく、長生郡の北半分をいうのであって、『和名抄』に長柄郡には刑部以下六郷があったという。この広さをもつ地域にこの特殊な地名が、理由なくして発生したとは考えられない。