6 俵なし

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 前述のように、検地により田畑の面積とその品等、それに基づく生産高が権力者により明確に示されたのであるが、民間では、収穫量や小作米量、あるいは種籾の量により田積や生産高を表した。
 「俵なし」もそのひとつである。「二俵半なし」といえば、その田の小作米量を示し、その生産高は五俵である。これを「いれつけ」ともいい、水田を小作に出していなくともこのような表現を用いた。また、種籾の播種量により田積を表す場合もある。郷土では、「一升蒔」といえばほぼ一俵なしに当る。苗代一坪へ三合、一〇坪で三升の種を蒔くと、ほぼ一反歩の水田の苗となる。一反歩は普通「三俵なし」といわれたので、「一升蒔」は大体「一俵なし」に当るのである。これは、水田の生産力の向上した大正期以降の表現法であるから、数量的には江戸時代にあてはまらない。宝暦元年の立鳥村明細帳によれば、「種子反ニ付籾壱斗五升」とあるので、ほぼ現在の五倍の種子量を要したわけである。