1 田畑永代売買の禁

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寛永二〇年の土民仕置覚に、「田畑永代之売買仕ましき事」と規定され、同時に、その罰則である「田畑永代売御仕置」(10)が定められた。
  一、売主、牢舎の上追放、本人死候時は子同罪
  一、買主、過怠牢(かたいろう)、本人死候時は子同罪
    但、買候田畑は売主の御代官又は地頭えこれを取上ぐ
  一、証人、過怠牢、本人死候時は子に構なし

 このようなきびしい禁令が、江戸時代初期に出されている。土地の兼併と貧農の没落による耕地の荒廃を防ぎ、年貢を確保しようとしたものである。「頼納質(たのみおさめしち)」も厳重に規制している。これは、質入れした者が年貢諸役を負担し、質取主は質田を耕作して、収穫を全部利得するもので、買取るより有利なものである。永代売り同様に罰せられた。後には、質地に出して流す、という方法で実質的には売買同様の土地所有権の移動が行なわれ、禁令は空文と化したが、頼納質だけは土地の所属が不明になるという理由で、後代まできびしく取締られた。田畑永代売買の禁令は、空文となったまま明治五年まで続いた。