地方自治制度が戦前のものと比べものにならないくらい進歩し、変革されたことに伴って地方議会の権限は大幅に拡充された。議会には、権能と責任を果たすために議決権を中心としていろいろな権限が与へられている。議会の権限を大別すると次のとおりである。
1議決権 2選挙権 3調査権 5決定権 6承認権 7検査権 8監査請求権 9意見提出権 10請願受理権 11報告書類の受理権 12懲罪権 13規則制定権
これらの権限のうち議決権について時代の変遷を見ると、地方自治法の制定された当初においては、議決事件として九項目を掲げてこれを限定し、所謂概括主義を探用していない。昭和一八年の地方制度の改正以前においては府県会と市町村会とは、府県と市町村の権能及び性格の相違に伴い、議決事項が異っていたのであって、府県会については、議決事項は一貫して制限列挙の主義によっていたのに対して、市町村会については概括例示主義を採用し、市町村会は、いやしくも市町村に関する事件であれば、原則としてすべての事項について議決権を有するものとされていたのであった。しかしながら、市町村の行政が繁劇の度を加え、事務の内容もまた日一日と複雑化した現在においては、市町村に関する事件はすべて市町村会の議決を要するとすることは、行政事務を敏活確実に処理する上に障害が多く、又多年の経験により事務処理方法にも自ら一定の方式と慣例が形成されているから、議決事項は大綱に止め、細部の事務は、市町村長に一任するとしても弊害があるとは認められないので、行政の能率的処理という観点から、昭和一八年(一九四三)の市制町村制改正の際府県会と同様に制限列挙主義によることとされたのである。