農地改革法の定めている改革の内容は、多方面に亘っているが、その中心をなすものは、自作農の創設である。即ち政府は、全国百万戸の地主から、二百万町歩(二百万ヘクタール)の小作地を、農地委員会の買収計画に基づいて買収し、同委員会の売渡計画に基づいて、三百万戸の農家に売渡し、自作農を創設しようとしたものである。
このような大規模な土地制度の改革は、日本の歴史の中にも未だその例をみないのである。従来、日本の土地制度の改革では、奈良平安朝の貴族社会を現出した大化の改新や、徳川三百年の封建制度確立の基礎を造った太閤検地、明治維新の地租改正を中心とする土地制度の改革などがあげられるが、農地改革法に基づく大改革に較べれば全く雲泥の差ということができよう。
さて、このような大改革は、どんな過程で行なわれたのであろうか。