農地の買収と売渡し

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農地委員会が行う農地開放の過程は、大まかに言えば、地主から農地を買収して、これを小作人(耕作者)に売渡す仕事であるが、それが完結するまでには、いろいろな事務が入交っている。これを一覧表にまとめたのが上の表である。この中の主な項目について実際にどう行なわれたかを記してみよう。
 

売渡計画書等の書類
〔農地改革顛末概要(農地改革記録委員会著)による〕

 ① 買収計画書
 どれだけの地主から、どれだけの農地を買収するかを決める仕事であるが、これが極めて大変な仕事である。
 旧日吉村と旧水上村は、水田が多く、畑の一部は共に旧長柄村にある。長柄村は、畑が多く、然も、それらの地主は、近隣の日吉、湿津、市東、新治、水上、東郷、茂原、二宮、豊田等十数村に亘っている。
 それらの自作地、小作地や在村、不在村等一筆毎の基礎調査を行い、買収地と買収面積、対価報償金を決定してゆく。そして、地主の承認が得られたものは、村農委から県に申請して、承認を求め、買収令書を本人に交付し最終決定となる。しかし、最初からすべての地主について買収承認が得られるとは限らないので、大体の見通しがついたところから買収手続をすすめ売渡し計画も並行的に進めていった。

 ② 売渡し計画書
 どんな耕作者に、どの位の土地を売渡すかをきめる計画案である。買いうけたい土地が、そのまま耕作者に売渡せぬ場合もあるので売渡し基準を定め、これに基いて売渡しを進めたがその決定も中々複雑であった。売渡しが決定すれば、知事から耕作者に売渡通知書が交付される。

 ③ 買収と売渡し進行
 さて計画書に基づいて、買収・売渡しが、実際にどのように進行したかを、長柄、日吉、水上三村の確定調査表により調べてみよう。

 表1は、三村の農地その他の買収、売渡しの総面積を示したもので、それが具体的に、どう行なわれたかを一覧表にしたものが、表2以下表4までの資料である。水上村のものは、見易くするため、対価を除いた表である。
 
(表1) 農地その他の開放面積(昭和26年度末)
 村名農地宅地牧野合計

長柄
日吉
水上
3,629,507反
1,469,328 
1,467,600 
47,522反
4,020 
4,100 
64,319反
408 
9,900 
3,736,824反
1,473,826 
1,481,600 

長柄
日吉
水上
3,627,210反
1,469,428 
1,477,924 
47,522反
4,020 
4,100 
64,319反
408 
9,900 
3,739,121反
1,473,926 
1,491,924 
(他町村との交換があるので,買収,売渡しの数字は一致しない,単位1,124反は1反1畝24歩とあらわす。)

 
 先づ水上村について見ると、農地の買収売渡しは昭和二二年(一九四七)七月二日に始まり同二四年一二月二日まで、一〇回に分けて行なわれている。牧野や宅地は七回に分けて行なわれた。売渡し済みの率を調べると、二二年度六八・九%、二三年度が残り二五・七%で、ほぼ二ケ年で完了している。(表3の1・2)
 
(表2) (水上村)
買収金支払方法(田及び畑)
種類金額
現金払120,677円52銭
証券払1,197千円

一万円券
五千円券
一千円券
74枚
32〃
307〃
合計1,317,677円52銭

 
 
表2の1
(様式第6号)長柄村 買収売渡弁地対価等確定調査表
(既野地)(昭28.3.31確定)
年度買収
    期日
売渡
買収(取得)A売渡B
件数面積対価
件数面積対価





買収
所管換
先買
517
1
 
3538,509
40,011
 
1746,154.28
8,009.28
 
1433
11
 
3492.109
40.011
 
1721,551.12
8,009.28
 
5183578,5201754,168.5614443532.121729,560.40





25. 7. 2
   12. 2
26. 3. 2
所管換・先買
42
8
9
13,920
9,425
9,513
31,198.69
2,349.73
20,999.20
53
10
10
13.920
9.425
9.513
31,198.65
2,349.73
20,999.20
5932,92854,547.627332.9354,547.62
買収
所管換
576
1
577
3571.507
40.011
3611.518
1800,706.90
8,009.28
1808,716.18
1506
11
1517
3525.107
40.011
3565.118
1776,098.74
8,009.28
1784,108.02





21. 7. 1911.3186,638.241111.3186,638.24
(11.1及び27.3.1なし)
27. 3.31
所管換その他
9
6.601
8,081.68
12
11.712
10,456.24
1817.91914,719.922323.10017,294.48

買収
所管換
その他
594
1
3589.426
40.011
1815,426.92
8,009.28
1529
11
3548.204
40.011
1703,193.22
8,009.28
5953629.5071823,436.1015403588.2181,801,202.50
(附)なお,このほか売渡分として,国有地等面積38反9畝22歩(対価22,588円88銭)がある。

 
 日吉村の場合は、始まったのは水上と同じく二二年七月二日であるが、終ったのは、二四年七月二日まで八回で完了し最も早く終っている。売渡し済みの率は、二二年度、一二〇町六反七畝て、売渡し総農地一四六町九反七畝の八二%で、翌年一八%を実施した。(表4の1・2)
 
表2の2
長柄村 買収売渡農地対価等確定調査表(牧野)
確定日 昭28.3.31
年度買収
    期日
売渡
買収(取得)A売渡B
件数面積対価
件数面積対価




買収
所管換
先買




25.12. 2
26. 3. 2
1
2
14.712
10.309
1,337.04
5,363.20
3
3
14.712
10.309
1,337.04
5,363.20
325.0216,700.24625.0216,700.24




26. 7. 1439.22820,595.20939.22820,595.20
439.22820,595.20939.22820,595.20

764.31927,295.201564.31927,195.44
(註64.319≡6町4反3畝19歩とよむ)

 
 
(表3の1)(水上村)(昭和25.11.役場資料)
(水上村)買収面積表売渡面積表
実施年月日件数戸数
1回
(22. 3.31)
 
2
(22. 7. 2)
1438,6054,31042,9153538,6054,31042,915
3
(22.10. 2)
57590,82371,404662,227473608,30170,725679,026
4
(22.12. 2)
35268,62929,504298,203209265,71230,911296,623
5
(23. 2. 2)
6
(23. 3. 2)
2454,01916,60270,6218156,60915,61072,219
7
(23. 7. 2)
78200,70942,802243,511218196,30440,106236,410
8
(23.10. 2)
7746,82713,20960,1069246,61114,62161, 302
9
(23.12. 2)
137,2023,01710,219137,6182,72910,417
10
(23.12.31)
11
(24. 3. 2)
134,906275,00384,906275,003
12
(24. 7. 2)
122,0068052,811141,8148052,619
13
(24.10. 2)
14
(24.12. 2)
83,3056053,91094,4046055,009
15
(25. 3. 2)
所管換67,7244161,6014,50066,101
3311,217,311182,4251,467,6001,2031,292,625185,2291,477,924

 
 長柄村の場合は、他町村関係が極めて複雑なため、事務的手続がやや遅れ、二六年度末までかかったものの、その九八%は、二四年度までに完了している。(表2の1・2)
 
(表3の2)
(水上村)(昭和25.11. 役場資料)
 買収売渡
牧野宅地溜池牧野宅地溜池
1回~3回





4416646416646
5
6
71191,0791191,079
84,7211,0581004,7211,058100
9601601
10
111,2105581,6061,2105581,606
121,5275921,527592
13
141,0261671,026167
15
9,9004,1001,7069,9004,1001,706

 
 
(表4の1)日吉村 買収確定表(昭和25.3. 役場資料)
   区分

買収期日
件数面積金額内訳証券額面別通数
対価報償金合計現金払証券払一万
円券
五千
円券
一千
円券
昭和22. 3.31
第1回 (い)
      千円   
〃 22. 7. 2
第2回 (ろ)
4113052120108119,65816119,6581616,658161031853
〃 22.10. 2
第3回 (は)
7836691872726337,9634476,34671414,3101540,310153741717119
〃 22.12. 2
第4回 (に)
574080015615399,0592095,95474495,0139429,013944662621101
〃 23. 2, 2
第5回 (ほ)
54738152851675,2940018,7529594,0469521,04695731538
〃 23. 3. 2
第6回 (へ)
40
〃 23. 7. 2
第7回 (と)
2811451535705113,1515231,0044144,1555615,1555612921249
〃 23.10.2
第8回 (ち)
71737192230070,9852814,1129985,0982726,09827591239
〃 23.12. 2
第9回 (り)
5182525222,63232136622,768942,76894
〃 23.12.31
第10回 (ぬ)
〃 24. 3. 2
第11回 (る)
〃 24. 7. 2
第12回 (を)
212102121022,13504622722,757767577622
〃 24.10. 2
第13回 (わ)
〃 24. 12. 2
第14回 (か)
〃 25. 3. 2
第15回 (よ)
3361,1695242998041,120,87896236,930771,357,80973151,809831,2064865401

 
 

買収・売渡嘱託書等の書類

 

強制譲渡に関する文書綴

 

売渡に関する文書綴

 なお三町歩以上を開放した地主数をみると、水上七、日吉一四、個人の最高では、水上の一八町六反八畝五歩、長柄の九町六反九畝二一歩、日吉の七町四反六畝二六歩となっている。
 買収金の支払状況をみると、水上村の場合、現金支払は九%で、九一%が証券払となっている。日吉、長柄もほぼ同様である。(表2)
 
売渡面積及対価確定額調書(既墾地・牧野・宅地)
(表4の2)千葉県 長生 郡市 日吉 村町 日吉 地区農地委員会印
           区分
買収期日別売渡
売渡戸数売渡面積売渡対価
合計一時払割賦払
第1回 (22. 3.31) 買収分     
第2回 (22. 7. 2) 買収分15013040720100150515119,51296119,51296
第3回 (22.10. 2) 買収分19536680572726439601337,96344337,96344
第4回 (22.12. 2) 買収分329408311105615513926399,31280399,31280
第5回 (23. 2. 2) 買収分117740102851610252675,4232075,42320
第6回 (23. 3. 2) 買収分
第7回 (23. 7. 2) 買収分12011541234700150112112,92964112,92964
第8回 (23.10. 2) 買収分7573719223009601970,9852870,98528
第9回 (23.12. 2) 買収分41825252244172,632322,63232
第10回 (23.12.31) 買収分
第11回 (24. 3. 2) 買収分
第12回 (24. 7. 2. 買収分812102121022,135042,13504
第13回 (24.10. 2) 買収分
第14回 (24.12. 2) 買収分
第15回 (25. 3. 2) 買収分
物納分
合計
9981,1706292987291,4694281,120,894681,120,89468

 
 このようにして、農地改革は極めて短期間に終了した。結局三村の解放農地の二六年度末の集計は、上記の表の通りとなった。買収と売渡しの数が異るのは、他町村からの売渡が含まれるためと思われる。